日本でのお葬式は仏式で行われることが多いですが、国内に登録されているだけでも約85,000社もの神社が点在することからもわかるように、古来より「神道」という宗教があります。
神道では仏教の通夜にあたる通夜祭、葬儀にあたる葬場祭が自宅か斎場で行われます。神道では、死は"けがれ"とされ神社に死を持ち込んではいけないため、神社で通夜祭、葬場祭を行うことはありません。また、これらの儀式は仏式と異なり「お見送りするための儀式」ではなく、神道の概念では人は"神の計らいによって、この世に生まれ、この世で役割が終わると故人の霊が神々の世界へ帰って子孫を見守る一家の守護神になる"存在ということから一種のお祭りであるとされています。
さらに、通夜祭、葬場祭を執り行うことで、不幸が起きてしまった非日常の状態を祓い清め、不幸が起きていない日常に戻すという意味があります。
●通夜祭
式の前に身を清める「手水(ちょうず)の儀」、斎主(神職)による故人の安らかな眠りを祈り、子孫を守護して家を守ることを願う言葉を申し上げる「祭詞奏上(さいしそうじょう)」、焼香にあたる「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」、位牌にあたる霊璽(れいじ)に故人の霊を移す「遷霊祭(せんれいさい)」などが行われます。通夜祭の後は、通夜ぶるまいにあたる「直会(なおらい)」の席が設けられます。
「手水の儀」「玉串奉奠」等につきましては、こちらをご参照下さい。
【神道の拝礼作法】>>
●葬場祭
大まかな流れは「通夜祭」と同様で、式の前に身を清める「手水(ちょうず)の儀」、お祓いを行う「修祓(しゅばつ)の儀」、斎主(神職)による「祭詞奏上(さいしそうじょう)」、焼香にあたる「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」などが行われます。棺への花入れ、喪主挨拶などの後は「出棺祭」「火葬祭」「帰家祭」が行われ、その後、精進落しにあたる「直会(なおらい)」の席が設けられます。
ただし、通夜祭・葬場祭において感染症が気になる時期は「玉串奉奠」や「直会」などの作法が変更されたり省略される場合があります。
●神道の葬儀に参列する時の注意点
神道では、亡くなった方は先祖とともに家を見守る神様になり、「死は悲しむべきものではない」とされているため、哀悼の意を述べるのは不適切とされます。仏教用語で使用される「冥福」「成仏」「供養」などの言葉は使わないように注意しましょう。仏教における「お悔やみ申し上げます」と伝える場面では、「このたびは突然のことで...」などと言葉を変えることをおすすめします。服装は喪服でかまいませんが、数珠は使いませんので持参する必要はありません。
供花は仏教の葬儀で用いる花と同じですが、供物と不祝儀袋は若干異なります。神道の供物は鮮魚などの海産物、乾物、野菜、酒、和菓子、果物、五穀などで、線香は供えません。不祝儀袋は白無地に白黒または銀一色の水引のものを用い、表書きは「御玉串料」「御神前」「御榊料(おんさかきりょう)」「御霊前」等となり、正式には、涙で墨がにじんだことを示すとも、悲しみが強すぎてうまく墨をすることができなかったことを表す意味から仏式同様に薄墨で書くとされています。
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